ももクロ≠高倉健

2015年1月20日

 北海道で雪に埋もれて立ち往生したり、富山でやはり雪で列車が運休になったりと散々な旅が続いていますが、それは日記に書くとして・・・。

 今日は、『幕が上がる』の映画前売り開始の日でした。全国のセブンイレブンでは、いろいろと混乱があったようです。申し訳ありません。と、私が謝ることでもないのですが。
 妻が、昔、セブンイレブンでアルバイトをしていたので、こういった新しいキャンペーンが始まると色々と大変なのだと聞きました。セブンイレブンの店員さんも、「『幕が上がる』めんどくせーな」と思わないで欲しいと願います。

 関係者が口を揃えて『幕が上がる』の出来上がりを誉めるものだから、「誉めすぎなのではないか」「ハードルあげすぎではないか」という声も聞かれます。しかし、実際にいいんだから仕方がない。と言ってしまっては身もふたもないのですが、もう一つ、作家としての事情もあります。
 担当編集者からは、『幕が上がる』の文庫化、映画化キャンペーン展開にあたっては、各地の平田ファンの書店員さんが、すごく協力をしてくださっていると聞いています。これまでも、私の地味な本を、店長の目を盗んで、こっそりいい棚に置いてくれたりしてきた方たちです。私の本を売るために、多くの方が頑張ってくれているのに、当の作家本人が「まぁ、本も買ってくださいね、テヘ」みたいなコメントで許されるはずがない。ここは、「買え」「買いまくれ」「買わないと呪う」くらいのことは言い続けないといけない。それが作家というものです。そんなことをしなくていいのは、村上春樹さんくらいのもんです、たぶん。
というわけで、まだまだ誉めます。

 主演がももクロさんに決まった当初から、本広監督には、「奇を衒わずに、王道のアイドル映画を撮ってください」とお願いしてきました。本広さんが敬愛する大林監督が、70年代から80年代に、アイドル映画と揶揄されながら、のちに日本映画史に残るような名作を連発したように。
 ちなみに、私自身のアイドル映画の定義は、(既存のファンを満足させるために)アイドルの魅力を存分に発揮させつつ、しかも新しい、その潜在的な魅力をも引き出すといったところでしょうか。たとえば、山口百恵さんが、アイドル、歌手から国民的スターへの階段をのぼっていったようにです。

 さて、結果はというと、本広監督は、私の「王道のアイドル映画」という期待をはるかに超えて、新しい「アイドル映画の王道」を築いてくれました。
 思えば今回、本広監督は、前人未踏の領域に挑戦しています。グループアイドルが全員出演して、普通のドラマをやるという映画は、ほとんどありません。私の知る限りでは、犬童監督の『黄色い涙』(嵐主演)くらいかと思います。まして女性アイドルグループでは過去にほとんどない例だと思います。間違っていたら申し訳ない。アイドルにも映画にも、あまり詳しくはないので。
 今回、私たちは、それをやろうとしてきたわけです。そして、それは作品としては、ほぼ成功した。しかし、前人未踏のことですから、多くの人は、観る前はその成功を信じないでしょう。それも仕方ない。これは奇跡なのだから。

 さて、私たちの世代で「アイドル映画」といえば薬師丸ひろ子さんですが、先日の私と監督の会話では、以下のようなやりとりもありました。これもたぶん、雑誌には載らないと思うので、こちらに収録。

平田「森村(誠一)さんの話では、『野生の証明』の全国キャンペーンのときに、朝、ホテルのレストランに行ったら、入口に高倉健さんが立っていて、『原作者の先生が食べるまでは、俳優は先に食べられません』って、待ってたらしいよ」
本広「へー」
平田「いや、だから、もう少し、原作者、大事にしようよ」
本広「でもオリザさんは森村誠一じゃないし、ももクロは高倉健じゃないからなぁ」