青年団は平田オリザを中心に1982年に結成された劇団です。私たちは、平田オリザが提唱した「現代口語演劇理論」を通じて、新しい演劇様式を追求してきました。このまったく新しい演劇様式は、90年代以降のわが国の演劇シーンに大きな影響をあたえ、演劇界以外からも強い関心を集めてきました。

「東京ノート」(2009年11月、大阪)画像

(c)Toshihiro Shimizu

従来の日本演劇に対する平田の批判の中核は、西洋近代演劇の移入をもとに始まった日本の近代演劇は、戯曲の創作までもが、西洋的な論理で行われてきたのではないかという点にあります。このために、日本語を離れた無理な文体や論理構成が横行し、それにリアリティを持たせるために俳優の演技までが歪んだ形になってしまったと平田は考えてきました。

「ときには聞き取れないような小さい声でしゃべる」「複数の会話が同時に進行する」「役者が観客に背を向けてしゃべる」などが青年団の演劇様式の外見的な特徴であり、当初は、こういった点だけが強調して伝えられてきました。しかし、これらの特徴はすべて、これまでの演劇理論を批判的に見直し、日本語と、日本人の生活様式を起点に、いま一度、新たな言文一致の新鮮な劇言語を創造し、緻密で劇的な空間を再構成していこうという戦略にもとづくものです。青年団は、確固とした演劇理論にもとづいた舞台づくりのなかから、常に演劇の枠組みそのものを変えるような、新しい表現を創りあげていこうとしています。

また、青年団は、所属する演出家が、劇団内で不定形のユニットを作り、平田オリザが支配人を務める「こまばアゴラ劇場」を中心に、独自の企画を行う公演として、2002年度より「青年団リンク」を立ち上げました。企画、制作、広報などは、芸術監督平田オリザを中心に、本公演に準じる形で行われます。「青年団リンク」を通じて、青年団は、複数の演出家、劇作家、多数の俳優を有し、多彩な演目を観客に提供するという日本では珍しい「シアターカンパニー」を目指します。

近年は特に、その活動を海外に広げ、毎年のように海外ツアーを行ってきました。特にフランスでは、平田オリザ戯曲に対する評価の高まりと共に、青年団の演劇様式と、粒の揃った俳優の演技力が高い注目を集めています。