ももクロさんたちの演技について

2014年12月10日

 「ももクロさんたちの演技についてはいずれ」と、ずっと以前に書いたのですが、「いつ書くんだ!」と要望が強いので、そろそろ文章にしておきます。いままで書いてきたことと、多少、重複する点もありますが。

ももクロ

すでに、予告編などをご覧になったももクロファンの方たちからは、「あきらかに以前より、演技が上手くなっている」とお褒めの言葉をいただいています。おそらく、本編を見ていただければ、多くの方が、同じ印象を持たれることと思います。
 今回、「プロ向けの演劇のワークショップ」というものの存在を、多くの方に知っていただけたことも、意義があったかなと思っています。欧米では、テレビに多く出演する俳優が、演劇の舞台に出るときに、発声や身体を鍛え直したり、演技をブラッシュアップする学校があります。
日本では、これまで、演技というのは現場で学ぶものといった風潮があり、特に映像の世界では、きちんとした演技の教育が、あまりなされてきませんでした。
 私たち演劇の世界の人間からすると、ある程度の資質のあるタレントさんや、アイドルの方たちなら、初期の段階で、きちんとしたワークショップを受けてもらえれば、それなりに(その資質に応じて)演技力を伸ばしてあげることは出来ると考えています。今回、そのことが、多少なりとも形になって示せたとすれば、とてもいい機会をいただいたなと思います。
今回のワークショップは、映画やテレビの関係者も多くいらっしゃったのですが、口々に、「こういうプロセスは大事だ」とおっしゃっていただいたのは、たいへん励みになりました。

ももクロさんたちは、まだ女優業の第一歩を踏み出したばかりです。俳優の演技は、演出家、映画監督との相性も重要です。今回は、いわば短期決戦でしたので、とにかく、今回の映画にあった演技力をつけてもらうことを主眼としました。たとえば、発声練習や身体訓練は、ほとんどしていません。これから先、彼女たちが、本格的に女優の道を歩むなら、特に舞台にも出演するなら、もっともっと勉強していかなければならないことがあるかと思います。
俳優の演技の「うまさ」も多様です。どんな監督さんの要望にも応えられる器用な役者さんもいれば、役がはまれば大化けする方もいます。有安さんや佐々木さんは前者でしょうし、高城さんは役を選ぶタイプかもしれません。私は個人的には、劇中劇の方の主役である玉井さんの演技がとても好きでした。たいへん集中力のある役者さんです。そして百田さんは、リーダーだけあって、本当に難しい役を、見事に演じきってくれました。これから先、おそらくドラマなどのオファーが、たくさん来ることと思います。皆さんに合った、いい役柄、いい出会いがあることを願っています。

以下は、これも以前にも、若干書いたことですが。
 今回のワークショップは、本広監督の要望に応じて、基本的な演劇講座と、実際の映画のシナリオを使ったワークショップ、そして劇中劇の稽古の三本柱で構成しました。
 講座の中では、短いスキットを使って、数人に分かれて台詞を考えたり、動きをつけていったりというグループワークも経験してもらいました。演劇は、映像に比べて、稽古期間から本番まで、俳優本人が考えなければならない部分、判断しなければならない事柄が格段に多いからです。
 実際のシナリオを使ったワークショップは、普通なら現場で行うリハーサルを、稽古場で、様々な動きを試しながら行っていくというものです。台詞を言っている最中に他の人から声をかけられたり、他の人の動きも意識しながら台詞を喋ったりします。
 劇中劇の部分は、通常の稽古通りに行い、演劇の稽古の雰囲気も併せて体験してもらいました。
 日産スタジアムでのライブの前の忙しい時期でしたが、川上さんはじめ、事務所の方々も、積極的に意義を理解していただき、最大限スケジュールを空けてもらった点も、本当に感謝しています。

本広監督からの情報では、あと10日ほどで編集作業が終わり、年明けには完成版を見せてもらえるそうです。楽しみです。