朝目覚めると何故か夫婦になっていた昇平とすみえ。
離婚の危機にある彼らそれぞれの兄と姉。
二組のカップルを通して、夫婦のあり方を淡々と綴っていく平田オリザ流不条理劇。

この『隣にいても一人』という作品は、8年前、帯広の演研という小さな地方劇団のために書き下ろしたものです。もちろん、当初は、このような広がりを持つ作品になるとは、思ってもいませんでした。
昨年、私たちは、三重、広島、青森、熊本の4つの地域で、この作品を創りました。すべての地域でオーディションを行い、舞台美術のワークショップを行って上演までにこぎ着けたプロセスは、各地で大きな話題となり、すばらしい成果をあげることができました。
今年の1月には、この本家帯広演研や、3年前に創った盛岡編、新たに創った関西編、そして英語版リーディングも含め8つの作品が集い、過去に例を見ない同一作品8バージョン同時上演という企画も成し遂げました。
今年度は、関西編が帯広で、青森編が盛岡で、熊本編が広島でといったように、各地の相互交流も始まっています。地域の財産となり、繰り返し上演され、他地域での上演で資金の回収も見込める作品づくりという所期の目的は、確実に達成されつつあります。この三重編は、三重県文化会館と青年団が共同で制作した作品です。公共ホールと小劇場の新しい協働の形としても、意義のあるものになったと考えています。
今回の三重編名古屋公演は、同時期に行われる広島編鳥取公演と並んで、初めての完全アウェイ公演です。多くの方々に近県で作られた新しいスタイルの作品をご覧いただければと願っています。

平田オリザ