『新・冒険王』について

2015年5月22日

 

『冒険王』稽古150501

一ヶ月ほど前に、日刊ゲンダイに私のインタビュー記事が載りました。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158874

その中で私は、以下のような話をしました。

「日本がアジア唯一の先進国という座から滑り落ちたことを日本国民はまだ受け入れられない。どう受け止めていくのか、まだ誰も答えを出せていない。思想家も社会学者も政治学者も、もちろん政治家も。これはつらく寂しいことなんです。でも、受け入れなければならない。例えばイギリス。大英帝国が崩壊して、あの小さな島国の中で生きていこうという決意をして、いろんな試行錯誤をしたわけです。ドイツの場合も、自らが「欧州の一国に過ぎない」ということを受け入れ、今がある。それは「謝る」「謝らない」とかっていう問題より実は大事な、深いことなんです」

 いま創っている『新・冒険王』のテーマはまさにそこにあります。
『新・冒険王』の企画書に、私は以下のようなキャッチコピーを書きました。

 日本はまだ、アジア唯一の先進国の地位から滑り落ちたことを受け入れられない
 韓国はまだ、先進国の仲間入りをしたことに慣れていない

 『冒険王』は、私が十六歳の時に自転車で世界一周をした実体験が元になっています。1980年、ソヴィエト軍のアフガニスタン侵攻により、中東を通ってアジアへと抜ける長距離バスが運休となり、多くのバックパッカーがイスタンブールで足止めを食らいました。
 この物語は、そんなイスタンブールの安宿を舞台に、東にも西にも行けない宙ぶらりんの日本人たちの姿を克明に描きます。

 『新・冒険王』は、同じ安宿を舞台に、2002年、今度はアメリカ軍のアフガニスタンへの攻撃によって足止めを食らった日韓両国の若者たちの話です。2002年6月18日、ワールドカップサッカー日韓大会開催中。折りしも、この日の午前中に日本がトルコに敗れ、そしてこの日の午後に韓国がイタリアに勝利します。舞台は、韓国がイタリアに勝つ試合経過とリンクさせる形で、完全にリアルタイムで進んでいきます。そこに、いまのギクシャクとした日韓関係の源流を見いだすという複雑な仕掛けになっています。
稽古は順調に進み、すでに、そうとうに深い手応えを得ています。
 多言語立体同時多発会話という、誰も観たことのないような作品になるかと思います。

http://www.seinendan.org/play/2015/03/4357

 表現にとって、本当のradicalとは何かをご覧に入れます。