『ソウル市民』(1989年初演)

  1989年に初演されたこの『ソウル市民』は、現在は4カ国語(韓国語・英語・フランス語・ロシア語)に翻訳され、『東京ノート』と並ぶ青年団の代表作となっています。
 昨年12月には、東京都世田谷区のシアタートラムで、フランス人演出家、フレデリック・フィスバック演出による『ソウル市民』(日本語上演)が上演されました。また今年7月には、フランス・アヴィニヨン演劇祭にて上演(フィスバック演出)され、さらに10月にはパリのシャイヨー国立劇場での上演(アルノー・ムニエ演出によるフランス語版)が予定されています。

 日本による朝鮮半島の完全植民地化前年のソウル(当時の呼び名は漢城)に暮らす日本人一家の生活を描いたこの作品は、初演時には、当時の小劇場ブームからあまりにかけ離れた作風から、当惑を持って受け止められました。しかし、91年の再演では、宮沢章夫氏に絶賛されるなど、青年団の名を世に知らしめるきっかけとなりました。

 この作品の題名『ソウル市民』は、ジェイムス・ジョイスの異色作『ダブリン市民』を意識してつけられたものです。イギリス統治下のダブリンの人々の姿を描いた『ダブリン市民』を射程に置きつつ、篠崎家の家族の意識の流れを、微細に表現できればと考え名付けられました。
 今回はキャストを一新し、より精緻で、濃密な一時間半が描かれます。
『ソウル市民』(2000年6月 シアタートラム)©青木 司

●ものがたり

 日本による韓国の完全植民地化、いわゆる「日韓併合」を翌年に控えたソウル(当時の現地名では漢城)で生活する日本人一家の一日が淡々と描かれる。

 1909年、夏、文房具店を経営する篠崎家。日本から後妻に入り、いつまでも朝鮮の生活になじめない母。自分が何をやりたいのか判らない長男。文学に青春の情熱を燃やす長女。日がな一日、何をやっているのか判らない書生。とりとめのない話を延々と続ける女中たち。
 そんな篠崎家に様々な客人たちが現れる。

 激動する時代のなかで、一見時代とは無縁な時間が流れていくなか、それでも確実に、植民地支配の波は押し寄せてくる。
 その時代の緊張の中で繰り広げられる淡々とした会話を通して、運命を甘受する「悪意なき市民たちの罪」を描き出す。
●出演者


叔父
長男
長女
次女
書生
女中
篠崎宗一郎・・・
篠崎春子・・・
篠崎慎二・・・
篠崎謙一・・・
篠崎愛子・・・
篠崎幸子・・・
高井孝夫・・・
鈴木みつ・・・
福島とめ・・・
篠塚祥司(客演)
山村崇子
山内健司
松井 周
辻 美奈子
小林亮子
古屋隆太
兵藤公美
石橋亜希子
朝鮮人女中

近所の人

手品師
助手
堀田家の女中
大工

李淑子・・・
金美玉・・・
堀田和夫・・・
堀田律子・・・
柳原竹八郎・・・
谷口美弥子・・・
井上すが子・・・
後藤一・・・
奥寺美千代・・・
角舘玲奈
村井まどか
大塚 洋
松田弘子
足立 誠
立蔵葉子
熊谷祐子
安倍健太郎
川隅奈保子