先日のスト以来行きそびれていたナポリの先、
ソレントからアマルフィへと今日は向かう。
天気も良好、そして今日はストも無い!
ソレントまでベスピオ周遊鉄道で向かいそれからバスに乗り
一路アマルフィを目指す。
なんだか、伊豆のようなところだ。
いきなり卑近な例で情けない感じだが、、。
ソレントが真鶴で、アマルフィが土肥といったところ。
そしてサレルノが小田原でナポリが東京か横浜といった感じだろうか。
地形的にも伊豆のようで、周囲の地域とはちょっと異なった急峻な地形、風土をもっている。
ともかく、バスからは絶景が続く。
しかし、どうして人はこんな険しい地形のところに海洋王国を築いたのだろうか。
またしても、このような疑問がもたげる。
イタリアの小都市は時たまとんでもない地形や風土の中に忽然と現れる。
このアマルフィもその一つ。
まず、アマルフィに向かう途中のこの辺りでは一番大きな街である
ポジターノを観たときに、びっくりした。
物凄い急斜面の岩山にへばりつくように連なって建つ家々。
これはちょっと見たことがない。
日本の山が海岸線に張りだしてつくるあの地形ともなにか違う。
なにが違うかと考えてふと気づくのは、地質の違いなのだ。
こちらの岸壁は、巨大な白っぽい岩塊からなっている。
だから、そこにへばりつくように建っている家々もその岩から生えたように
あるいは岩の一部のように迫り出し、重なり立ち上がる。
しかし、日本ではこうはいかない。日本のあの木造の住居形式と地質では
この急傾斜地にもしこのような都市を造るとしてもこれほど密集しては建てられない。
基礎の確保が難しい上に土であれば、段々畑のようにある程度平坦な地面が必要に
なるからだ。
しかし、こちらの都市はそんなことは無い。
もう、折り重なるように岩を彫り、あるいは岩の上に石を積みレンガを積み
壁面を立ち上げその壁面を今度は違う家が別の擁壁として利用する。
密集することによりさらに全体の強度が増してくる。
そんな立ち方なのだ。
風土と地形を読みとり、そこにあった素材と工法で住居を築く。
それが、その地域の自然と一体となり、なんとも言えないすばらしい風景を造り出す。
このアマルフィ一帯にはこの風景を築いた人々の風土や自然に逆らわないしなやかな力強さを感じる。
---今日のひとくちイタリア語---
roccia今日はサッカー観戦。
なんだか今日のナポリの天気は荒れ模様。
今日はこちらの現地時間13時半より、日本対ロシア戦がある。
家にはテレビがないので、知り合いのオペラ歌手、
ナカヤマさんのお宅にお邪魔しての観戦。
やっぱりイタリアではサッカーはなにより重要。
家々にはイタリア国旗がはためいている。
しかし先日のイタリア対クロアチア戦でイタリアが負けたので、
なんだか街も沈滞ムードなのだ。
それはさておき、今日はビールと唐揚げを持ってサッカー観戦。
しかし、良かった。日本が勝って。
ワールドカップ史上、日本が初勝利の瞬間を見られたのだから、、。
こちらは日本人3人で勝利をかみしめた。
きっと横浜は凄かったんだろうな、、。
---今日のひとくちイタリア語---
vittoria今日は今学期の授業の最終日。
そして今学期にエザミ(試験の採点)
がある生徒達は必要課題を提出。
今学期は主に2年生と1年生。それに前回提出していない
3年生、4年生といったところ。
今回の採点は生徒は同席不可。
私はなんとかその採点の様子に立ち会わせてもらう。
1年生と2年生はまだ、生徒の数が多い。
だいたい、30人ほどの課題を2時間ほどで採点する。
基本的にはよく授業に出て教授との面談を積極的に行い、
その課題について教授のアドバイスを聞きながら推敲を重ねた
生徒は点がよいようだ。
そして、やはり重要なのは要求課題を全てクリアしているかどうか。
もちろん、はじめから絵のうまい下手はある。
しかし技術的な面も重視される。
いくら絵がうまくても、舞台として機能しないようであれば、それはやはり駄目なのだ。
袖の考え方、ボッカシェーナの意味、見切れ等々。
舞台芸術としての総合的な目が要求される。
午後は工房に出かける。
工房では今週末から仮組稽古がローマで始まる、
野外劇のセットの製作で大変なことになっている。
トニーノさんも叫び気味。
ともかく舞台がでかい。
間口20m奥行き15mという巨大セット。
そして、その大きな舞台が転換で動くというから大変なのだ。
殆どの骨組みは鉄骨。
そしてキャスターは一つ耐荷重500キロという重量キャスターを使用。
仮組&稽古の為の仕込みが木曜から始まる。
私もローマまで同行する予定。
---今日のひとくちイタリア語---
ruota
前にベネツイアでも大変だったことを、
窓口に何十分も並んでいるうちに思い出した。
そろそろこちらで買い貯めた本を日本に送ろうと
専用の箱を買い、それに本を詰めて郵便局へ向かった。
まず、箱問題で一苦労。
専用の箱があるのだが、近くの郵便局では品切れだと言われる。
須藤さんが中央郵便局まで買いに行く。
別にこの専用箱でなくてもいいのだが、普通の段ボール箱で出す場合は
専用の茶紙で綺麗に包まなければならない、らしい。
確かにこの専用の箱以外で持ち込む人はみな綺麗に茶紙で包んでいる。
しかし、この茶紙がまた手に入りにくい。タバッキで売っているらしいのだが、
売っていないタバッキもある。
色々思考錯誤した挙げ句、結局専用の箱が便利なので、これに詰めて
今日やっと郵便局に向かったというところ。
しかし、ここからがまた大変。
箱が一つ10キロほどと重いので、こちらとしては少しでも楽しようと、
近くの郵便局に向かったのだが、そこで結局20分近く並んだ末、
郵便局員が言うには、中央の郵便局に持って行った方が無難だよ、という一言。
結局ここから、また中央の郵便局まで向かい小包専用窓口でさらに30分近く待つ。
やっと投函。小包を2つ出すのに2時間半。
イタリアの郵便事情はこれでも相当良くなったらしい。
「便利」「楽」「早く」という語彙はイタリアには無い。
それが良い意味で作用することもあるのだが、郵便に関してはまったく逆だ。
午前中一杯かかって、なんとか二箱。
さらに、午後もう一度出かけて残りの二箱を出す。
今日は一日がかりの郵便出し。
---今日のひとくちイタリア語---
Via Nave
工房の仕事の関係で、ローマに出かける。
工房の連中とは別に、一日早くローマに着いて、
残り少ないこの滞在期間で、まだ見残している
ポイントを回ろうと朝早く出発する。
今日目指すのはヴィラ・アドリアーナ。
ローマの皇帝ハドリアヌスが造営した巨大な別荘。
建築的にとても重要な遺構と言われている。
行き方はローマの中心街から地下鉄に乗って郊外の駅
ポンテ・マンモーロまで出る。
今度はここから発着する郊外バスに乗って一路ティボリへ向かう。
ティボリはローマの丘陵地帯の外れ、ちょっとした山の中腹に築かれた都市。
古代、中世を通して、ローマの別荘地として栄えた土地。
そのティボリの山から見下ろす5km程先の丘陵に遺跡、ヴィラ・アドリアーナが広がる。
だからここに行くには一度ティボリに寄り、
そこで、また違うバスに乗り換えて、向かうということになる。
実際ローマのテルミニ駅(中央駅)から地下鉄、バスを乗り継いで
2時間近くかかった。ホテルで相談すると、個人でヴィラ・アドリアーナ
に向かうのは大変だから、ツアーで行った方がいいと言われた。
しかし、ツアーだと一人40ユーロ。個人で行けば、公共交通機関の
料金プラス、入場料でも12〜15ユーロほどか。
多少時間はかかるが、これも地理や現在のローマ近郊の形態を把握するには重要な事だ。
ヴィラ・アドリアーナ。
北側にティボリの丘陵都市を望み、糸杉や松の生える、静かな丘陵地。
500mx1km程の範囲に様々な施設、建造物の遺構が広がる。
ハドリアヌス帝がローマの領土を旅した時に見た様々な
名建築を模して、この別荘を建造させたといわれている。
いわば、縮景園(中国の風光明媚な地形を縮小し模して造られた広島にある庭園)のようなも。
ルネサンスからバロックの時代には多くの建築家がここを
訪れ、廃墟となったローマの遺構を測量、スケッチしている。
実際に訪れて歩き回った感じでは、ポンペイのあの街全体と
ほぼ同じくらいの広さを感じた。とても大きな建造物群。
当時の街一つ分の大きさはある別荘建築ということだ。
しかし、街というには、市民生活を感じさせる住居、商店、公共施設はなく、
だからといって、別荘というには巨大過ぎる。
なんだか、今風に言えば、テーマパークといったらよいか。
神殿、皇帝の宮殿はもとより、消防隊の宿舎、図書館、浴場、大食堂、
養魚場、兵士の宿舎、客人の宿泊施設、池を伴った神殿、
海の劇場と呼ばれる円形のこれまた池を伴った美しい建造物、黄金広場、哲学者の間、、、。
それらが、微妙な空間的距離をもって配置される。
ローマが都市の中枢に造営した行政、神殿域を形成していたフォロ・ロマーノ
とも異なる特殊な建造物群。
そして、中には今だ用途不明の建造物群があるという。
この建造物群を前にして、テーマパークにも似た、いやテーマパーク以上の
建築空間概念を想像しえたこのローマ時代の建築家達に驚嘆する。
歴史的にはやっと近代に入り、ビルディングタイプという建造物群の類型概念が
出てくる。しかし、ローマはその遙か以前にすでに、現代の範疇でも計れないような
様々なビルディングタイプを構築しているのだ。
そして、レンガと石とアーチという現代から見れば限られた材料による
ローマ時代の工法で建造されている一つ一つの建築単体のその造形力の豊かさにも驚かされる。
機能と工法と形態の見事な融合と豊かな発想力。
ここにも建築がその建築をもって為し得る、無限の可能性の一つの解答が潜んでいる。
---今日のひとくちイタリア語---
periferia
今日はローマにある劇場テアトロ・アルゼンチーナで
野外劇場の為のセットが仮組される。
その仕込み初日。
しかし、こちらの現地時間昼の1時半からワールドカップ
予選リーグ勝ち残りをかけて、イタリアvsメキシコの試合がある。
仕込みより、やはりこちらの方がイタリア人には重要。
劇場に大きなテレビを持ち込んで、仕込みの最中からテレビを調整している。
総勢20名ほどで、この昼からの試合を客席に座って観戦。
ローマの伝統的なオペラ劇場の客席に座ってワールドカップ観戦というのも
なんともイタリアらしい。
しかし、凄い盛り上がり。
相手ゴールを揺らすたびに、全員立ち上がってテレビに突進する勢い。
ヤジも凄い。まるで、スタジアムにいるよう。
前半終了間際で確かメキシコが一点いれて、インターバルの前に
数人は悲嘆の内にたばこを吸いに劇場の外へ。
しかし、イタリアがなんとか同点にもっていき、
一次予選リーグ突破して良かった。
もし敗退していたら、仕込みもはかどらなかっただろし。
---今日のひとくちイタリア語---
platea 「プラテア、平戸間席」朝はカンピドリオ広場に向かい、少々スケッチ。
私は昼前に劇場入り。
ナポリの仕込みチームは今日の夕方には引き上げる。
ほぼ、開帳場になっている床面と両サイドのパネルは立ち上がった。
後は床が開閉した時に仕込まれている、オブジェパネルの仕掛けと
バックのこれまた開閉する鉄枠に取り付ける、紗幕(これは後日)。
それにさらに奥の部分の床の仕込み、といったところが残っている。
プランは全体にシンプルな作り。床面、壁面は白い大理石模様の木パネル。
転換で出てくるパネル等がそれに対比する黒を基調とした色。
しかし、床全面が開閉しバックパネルがほぼ全面開閉、そしてさらにその奥に
見えてくる奥舞台の底も一部開閉しおそらくそこから役者が登場すると思われる。
野外オペラの為のセットであり、細かい造りよりも、ダイナミックで
効果的な動きを取り組んだ舞台であるといえる。
通常の劇場では制限される、奥行きを紗幕とそれが開閉することにより
最大限生かそうというプラン。
基本的にはイタリアの舞台造りの伝統である、傾斜した床、バックの幕(これが今回は紗幕で
開閉する)というパースペクティブを生かした構成をもちいつつ、シンプルだが可動するパネルや
床を折り込み細かく練られたプランであると言える。
しかし、仕込みはやはりトニーノさんのプランではないので、どうも歯がゆい感じがする。
今回の美術プランナーはトニーノさんより10才くらい年上の方。
やはりそれは日本と同様に、仕込みに立ち会い、細かくチェックを入れてくる。
今回の問題はトニーノさんの説明では様々な仕掛けが入っている舞台であるが、予算の都合で
全て人力で動かすという仕掛けになっており、その為、本来ダイナミックな動きを必要とする
部分でも手動での装置を考えなければならず、そこがちょっと演出、美術家が要求するような
動きにするには不可能だということだ。
私も仕込みに立ち会い、床が開閉しその下から沢山の死体のオブジェを乗せたパネルが立ち上がるのだが、
おそらく、この美術家の性格からだろうが、
最低限の広さのスペースで最大の効果を引き出したいという
発想からかそのオブジェが仕込まれるスペースは限りなく狭いのだ。
そして、テコの原理あおのアルキメデスのようにそれを手動で持ち上げようということらしい。
しかし、案の定思ったより高さが出ない。
結局この仕掛けに関してはまた後日変更するということになったらしい。
基本的に今回の立ち上がったプランを見ていると、
この美術家の最低の力で最大の効果を引き出したいという性格が見えてくる。
いままで見たイタリアのここまでやるかという圧倒的な仕事量で攻めてくる美術家とは
ちょっとタイプが違うようだ。
確かに時間のないまた野外という性格もプランを左右していると思うが、、。
今回のこの野外公演の為の巨大セットの製作に立ち会い、感じたことは。
まず、思ったより美術家から上がってきた図面が細かくないということ。
コンピュータを使用してどうも助手に描かせたような印象を受けた。
基本的な寸法は入っているものの、それを鉄骨でやるのか木工でやるのかは指示されていない。
平面と立面のみ(詳細図なし)そして仕掛けの部分が開閉したときの寸法のみ書き込まれているという状況。
それをもとに、鉄骨の台割り図、仕掛けの詳細図をトニーノさんが手描きで起こす。
それを鉄骨屋に渡し、現物が出来上がってくる。
発注から3週間(その間にも他の現場は一つ入っている)という短い期間で
これだけの物量を製作したことにちょっと驚く。
基本的には木工は常時3〜4人、鉄工屋さんも3〜4人で動いている。
おそらく、時間がないので、どの部分を鉄骨にしてどの部分を木工でいくかということを
トニーノさんは計算しながら、製作図を引いたようだ。
この時間の無さの割には仕上がりはすばらしいと言えるのだが。
---今日のひとくちイタリア語---
stoffa