先日終了したフランスでの丸山先生によるワークショップ。
そのあと、ヨーロッパを彷徨っていた2人の芸術学校の学生が
昨日の朝、ナポリに到着。高野君と鈴木君。
ベネツイアの諏訪君のところに泊まってから、ビツエンツア、ベローナと観て
一気にナポリまで夜行で下ってきたらしい。
昨夜はみなでレストラン
(ロンバルディアという名のレストランテ&ピッゼリア)
に行き、ナポリ名物を食べる。
やはりワインが美味いと、一人が言う。
幸せなナポリの夜。
今日は朝から彼らはポンペイへ。
我々はベスピオ登山へ。
しかしこれがなかなか大変。
別に登山が大変ということではなく。
バスがなかなか来ないのだ。
ナポリからエルコラーノ駅へ向かい、
駅の近くのインフォメーションセンターでバスの事を伺う。
あと10分ほどで来ますよ、という。
駅のロータリーあたりにいて下さい。
切符はあそこのバールで売ってます、という。
その切符を売っているバールにいっても、バスが来てから
切符を売るとのこと、ちょっと待ってくれという。
バス停も見あたらないので適当に待つことに。
もうそのあたりからなんだがあやしいという気はしていたけれど、、。
案の上、それから30分以上まってもバスは来ない。
30分も田舎の小さな駅のロータリーにいればさすがに辺りが見えてくる。
田舎っぽい兄ちゃんやおじさんが30分以上も立ち話していたり、
あのあたりに数人おそらく同じバスをまっていると思われるガイジンさん
(イタリア以外の国から来てる人)がいたりと。
ああ、しかし、バスは来ない。
何人かはバスを諦めて乗り合いタクシーで山に向かった模様。
結局1時間以上待っただろうか。やっとバス到着。
運ちゃんはなんだかあたまにバンソコウをしている。
のんびりとバスから降りてバールに行ってしまった。
乗ろうとしている乗客達はどうしていいか解らず、
運ちゃんがもどって来るのを待っている。
もうみんなここはイタリアと半ば諦めながらただ、呆然と待っている。
バンソコウ運ちゃんが戻ってきて、さあ乗り込もうとガイジンの女性が
乗り込んで、チケットの事を話している、やっぱりチケットはあのバールで
買わないといけないならしい。
それから、またゾロゾロと我々はバールにチケットを買いにいく。
ああ、バンソコウよ。先にチケットのこと言っておくれよ。
なんだかんだで出発したのは待つこと1時間半後。
とっくに登って帰ってこれてる時間。
しかし、そんなことはここでは気にしていられない。
バスが来ただけでもラッキーと思わなければ、、。
ベスピオは山というより観光地だった。
まず、バスは途中のドライブインで15分とまり、そこのベスピオ名物おじさん(74才)の
ベスピオの歴史解説を聞き、カタログやおみやげを買わされる。
それからやっと徒歩登山口の駐車場までくる。
しかし、今度はその途中の関門で入山料一人6ユーロを払わなければならない。
山に金がかかるなんて、日本の山登りとはそこからして感覚が違う。
だから、なんだかまるで宝物を見るように、
山という聖堂にお金を払って入るのだ。
山頂からの景色は、、しかし曇っていた。
4月のナポリは曇りの日が多い。
アフリカからの乾燥した温かい空気が流れ込んでくるからだろうか。
まるで、中国の黄砂のように、この地の春も霞んでいる。
あれがポンペイかな?
頂上火口の売店のお兄ちゃんが指さした、雲の向こうを覗く。
これが、ベスピオの春の一日。
---今日のひとくちイタリア語---
salire
「サリーレ、登る」
ナポリ、オリエンターレ大学の4年生
我らがアントネッロの今夏短期日本語研修での
京都行きが決定した。(今週結果発表あり)
なんでも日独センターが主催しているヨーロッパの学生を
対象にした、夏期集中日本語研修プログラムで、
主にドイツの学生(これは10名前後)やイギリス、
アイルランド、ベルギー、フランス等々から
日本語や日本を研究している生徒を対象に、
夏休みのおよそ一ヶ月を京都で過ごさせるというものらしい。
そしてイタリアからはたった一人という枠で、
見事アントネッロがその栄冠を勝ち取ったということ。
だから、今のイタリアの学生では
ナポリのオリエンターレのアントネッロが一番ということになる。
なんとも、なんとも、、。
そして、今日はそんなわけで、我が家で須藤さんが巻きずしを
造り、夕食会ということに。
アイルランドで知り合ったミドリさんもちょうどナポリに
遊びに来ていたので、彼女も呼んで、調律師のノブさんと
おなじみダイスケさんそれにアントネッロチーム4人、
総勢9名でのフェスタとなった。
サーモン、カジキマグロのスモーク、ツナマヨネーズ、たまご、
昆布、漬け物、青菜といった具をすめしにのせて海苔を巻く、
do it yourself 式の巻きずしフェスタ。
そして閉めはみそ汁。
しかし、やっぱりここはナポリ。
その後、ナポリのドルチェ(お菓子)とカフェ、紅茶でフルコースといった感じ。
さすがにわさびには少々参っていたアントネッロであったが、
とても喜んでくれた(と思いたい)。
チベディアーモ!!と送り出した、夜の階段は温かく、
ああ、なんだか素敵な春の宵が過ぎて行く。
---今日のひとくちイタリア語---
アカデミアの授業に出たら、
お昼前から、別のクラスの卒業公演があるという。
寝耳に水。
授業中にそのクラスの生徒が宣伝に来ていた。
公演はジャン・ジュネ原作の「Le Serve・女中たち」。
1時間半ほどの公演だっただろうか。
舞台はステファヌンチ教授の授業が行われる教室を改造して仮設劇場としている。
細長い教室の両サイドを客席として、中央に舞台を持ってくる。
3間弱四方の舞台全体は円形のカーテン(一応紗幕のように透けて見える)で囲われている。
基礎舞台は三尺ほど上がっていてこちらは方形。
舞台中央前に小さな鉄製の柵で囲われたバルコニー。
奥にベッド、一人掛けのソファ、テーブル、鏡台
(これは客席側に向けて無対象の演技で表現)等。
設定は金持ちマダムの豪華な寝室といった感じ。
その閉じた世界で働く女中が繰り広げる、空想と虚構と幻想とエロティシズム。
美術的におもしろかったのは冒頭完全に降りていた
円形カーテンの一部がオペラカーテン風に所々開き、
だんだんと内部が明確に見えていくという美術的演出だろうか。
カーテンがまったく降りている時は中でなにが行われているか明確に見えない。
声とその見えにくい視界だけでシーンが展開していく。
その見えにくさが、逆に観客に注意力を喚起させることに成功していた。
しかし、あまりシーンが長くなると単に退屈なだけだが、、。
全体的にはトニーノさんはシーン展開が遅く、単調でつまらないと評していたが、
確かにちょっとたるい展開だったか。
しかし、出演していた3人の女性も舞台美術コースの生徒だといっていたから、
それにしては上手だったと思うけど。
印象としては、とてもおしゃれな感じといったらよいか。
カーテンのレース模様や背後の壁面の真っ赤&金色によるバラの装飾、
ナイーブな手摺りのライン等。
トニーノ先生のクラスの生徒達はどちらかというとボクトツというか、
ゴリゴリの真面目派が多い気がするが、ライバル?ステファヌンチ教授のクラスは
なんだかスマートでおしゃれなイメージが売りのようだ。
ジャン・ジュネの芝居を選ぶという時点でそれはもう、明確だが。
私もどちらかというとゴリゴリ派なので、
今回の公演はトニーノさんの意見に一応賛同。
午後はオリエンターレの大学の学生の卒業式があるから、
参加しないかという誘いを受けて、近くの教会に出向く事に。
しかし、行って解ったのは、卒業式ではなく、
卒業論文の口頭試問の公開試験だったことが判明。
一応形式的なものらしいが、日本では見たことがないし私も大学を卒業するとき
こんな経験はしなかったのでとてもおもしろかった。
教授が10人ほど、横一列に教会の祭壇をバックに座っている。
まず、担当教授が今回卒業予定の生徒のその卒業論文の概要を説明する。
次に生徒はその教授達の目の前に座らされ、その論文の詳細についてマイクを持って説明する。
それから、語学学科の学生であれば、例えば日本語学科の学生は
短い時間だが、その論文の主要な部分の一部を日本語で
説明する、そしてさらに英語でも若干の説明をする。
一人の持ち時間はだいたい30分ほど。
で、今回は三島由紀夫の戯曲
「サド侯爵婦人」を卒論のテーマに選んだアンジェラという女の子に呼ばれて
我々はこの会を公聴することになったのだ。
その説は、青年団の制作、太田裕子さんにも資料の提供をご協力頂いて、
ありがとうございました。(利賀村、公園財団の野原さん、写真提供ありがとう
ございました。)
アンジェラもありがとうといっておりました、、、。
学生の両親やら家族や友人が見守る中、この口頭試問は続けられていく。
なんだか、ヨーロッパの大学というものが社会的に持つ意味を感じさせられた
公聴会だった。
ガリレオもコペルニクスもこんな経験をしたのだろうか?
また勝手な想像が膨らむ。
密室で教授との一対一で、まあ、いいんじゃないのと評価が決められる
日本の制度とは異なり、形式的であれ、プレゼンテーションというその個人の表現、
言葉を重視するヨーロッパの伝統が、責任ある個人を育ててきたのではないだろうか。
ゴシックのファサードをもつこの冷たい教会の中での発表というのも、
社会と学校の歴史的な繋がりを感じさせるに充分な空間的効果がある。
---今日のひとくちイタリア語---
serva
「セルバ、女中、女奴隷、召使い」
今日のメインは、アカデミアの近く、
ベリーニ劇場で今週末から始まる、イタリアミュージカルの
仕込み現場をトニーノさん&学生達と見学というもの。
このミュージカルは2001年度のイタリアンミュージカルアワードという
賞を取ったもので、トニーノさんもお勧め。
というのも、この美術、プランは別の人だがトニーノさんの工房で
製作したものなのだ。
朝9時半に劇場前集合。
トニーノさん、助手のレオナルドさん。
今回のトニーノ組の卒業公演で衣装を手伝ってくれる女性の人。
それに学生が2名ほど。
30分ほど待つが学生は一人現れただけ。
後で解ったのだが、今日はストの日らしく、バス、電車、
地下鉄、学校、郵便局等すべてお休みの日らしい。
だから、学生の集まりが悪かった、のかもしれない。
まあ、それはともかく、ベリーニ劇場での仕込みは行われている。
我々は客席に陣取って、忙しい中、舞台監督(フィリッポさん)、
(こちらでは舞台監督はディレットーレ(指揮官)という名称がついている、)に
お話を伺う。
様々な劇場をツアーするときの問題点。
舞台の傾斜(こちらの伝統的な劇場はみな舞台が傾斜している)が
劇場により異なるのでそれを調整する必要。
仕込みの手順(舞台、照明、音響等々)
このミュージカルでの転換の数、
舞台上の指揮官(舞台監督といってもよいのだが、日本の舞台監督という言葉より
やはり指揮というか統率するという言葉の方が近い気がするが)
の役割について説明してくれた。
その後、トニーノさんの講義が若干。
ミュージカルと通常の演劇での舞台美術の考えかたの違い等。
見学と講義と質疑応答。
これはなかなか、学生でも体験できない経験だ。
日本でも仕込みやリハーサルを学生に見学させることが増えてきたが、
(私も参加している桜美林大学等で、、)
このような現場の人の声を聞くという機会はそうそう無い。
貴重な体験。
しかし、参加した生徒の数が少なかったのにはちょっと残念。
今夜は、サンカルロ劇場でオペラを見ようと考えていたのだが、
こちらもストの為、公演延期の模様。
ストライキ天国イタリア。
やっぱりイタリアはのんびりしている、というか、諦めているというか。
今日のチケットを買っていた人はどうなるのだろうか?
日本では大変な問題になりそうだが、、。
バスも電車も走っていないが街には人が溢れている。
今日は冬に戻ったようにちょっと寒い。
---今日のひとくちイタリア語---
sciopero
「ショーペロ、ストライキ」
こないだのグルノーブル建築大学のワークショップで知り合った,
チーちゃん(日本人)がナポリにやってきた。
彼女はエジンバラ建築大学に在籍中。
交換留学でベネツイア建築大学に来ており、諏訪君の関係で
今回のワークショップに参加していた。
夜は3人で近くのピザ屋に食べに行く。
やっぱり、ナポリのピザは最高においしい。
それに大きくて安い。(ベネツイアの半額ぐらいか)
さすがのチーちゃんでも一枚全部は食べられない。
ああ、我々も最初はそうだったのに、、。
明日は私は学校があるが、須藤さんとチーちゃんはカプリにいくらしい。
船はでるのか?
---今日のひとくちイタリア語---
barca
「バルカ、船」
ショーペロ(スト)の日があったせいで、
楽日の今日観劇ということになった。
安い席はないものかと、今回は開演1時間前に
買いにいくが、結局いつもと同じ値段。
それでもちょっとは安い、一人40ユーロちょっとの4階のボックス席を選ぶ。
ここでも充分見やすい。
日本の劇場ではちょっと味わえない俯瞰の視線。
今回の演目カプリッチョは、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ。
一幕もの。
なので途中休憩がなく、約2時間半ほど。
今回は事前に内容を調べる暇がなかったので、物語を追うことに必死。
ちょっときつかったか。
なんだか指揮ものんびーり、のんびーりといった感じで、
いまいちメリハリがない。
(多分、ストの影響で昨日も本番をしていたはずで、歌手は限界だったような、、。)
それに、ドイツ語での上演でイタリア語の字幕がでる。
どちらもそんなに解らないのに、イタリア語の字幕を追ってしまう。
そんなわけで非常に目の疲れる公演。
若いチーちゃんの、「子供の頃にそいうえば
少年隊がこのオペラやっとったねー」、という発言で、
我々年寄りもそういえばそんなことがあったようなと思い出す。
それからは少年隊のだれがどの役だったのかというのが気になってしまった。不覚。
ちょうど主役っぽい男性が3人いたし、、。一人はヒガシ似だと彼女たち、、。
ともかく。
荒唐無稽な末期的オペラ。
ヒーローも登場せず、事件もおこらず、歴史的な出来事もない。
音楽も奇妙な感じ。
しかし、それが狙い。
なんだか、バブル後の日本の状況みたいだ。
究極のオペラを夢見て、その夢の中に溺れていくヨーロッパの貴族達の幻影。
オペラのポストモダンといったらよいか。
美術も抽象的にもっていこうとしているのだが、ちょっと中途半端な感じ。
60年代のモダンアートの焼き直しのようなオブジェやデザイン。
私はやはりベルディのような、イタリアオペラの蜜月の方がいい。
なにかが始まることへの期待とそわそわ感。
ナポリの街のような、そんなオペラがいい。
---今日のひとくちイタリア語---
Capriccio
「カプリッチョ、きまぐれ、我がまま、浮気、奇妙な」
2001年度のイタリアンミュージカルアワードを受賞した
イタリアのミュージカル。
原作はマンゾーニの同名小説。
トニーノさんの工房で去年製作した舞台ということもあるが
アカデミアの学生2名がこの作品を卒業論文の選んだということで、
希望者を募って特別チャリティ公演を見ることになった。
金曜日の午前中。
なんだか、ジャニーズのコンサートのようなのりだ。
特別公演ということで、中学生、高校生などが学校ごとやって来ている。
値段も通常の半額以下。
公演が始まる前から異様な雰囲気になっている。
最初などは舞台に人が出てくるたびに拍手がおこる。
なんだか、中学の頃に初めて学校の行事で連れられて見た芝居を思い出す。
芝居も美術も自分の意志でいかないとやはり駄目な気がする。
途中休憩を挟んで3時間というまたまた長い作品。
昨夜、先日卒業が決まったアンジェラの卒業記念パーティに
呼ばれて(オペラ観劇の後)ちょっとしか飲まなかったはずの
サングリラがどうも良くなかったらしく、途中で気持ち悪くなる。
芝居を観ていて気持ち悪くなったのはこれが初めてか、、、。
それはともかく、イタリアにはやはりミュージカルは似合わない。
オペラの上演を前提として造られたこのすばらしい劇場なのに、
マイクとカラオケでのミュージカルになる。
なんだか、イタリアでマクドナルドの真似をした
ハンバーグを食べているような気がしてくる。
奥行きの無い音、そしてそれがもたらす歪んだ空間。
地声と生音で行うオペラが劇場も含めて
いかに完成された芸術であるかが逆に改めてわかる。
---今日のひとくちイタリア語---
male
「マーレ、良くない」