青年団は、自分たちの演劇理論をより深く理解してもらうためのワークショップ活動を盛んに展開しています。全国公演の際には、必ず、ワークショップやレクチャーを併設し、旅公演が、単なる巡回興行に終わらないようなシステムを生み出してきました。
演劇のワークショップとは、「こう笑えば楽しくみえますよ」「こう泣けば悲しく見えますよ」といった演劇技術の切り売りではなく、「私は演劇をこう考える」「私には世界はこのように見える」「人間とは、このような存在なのではないか」といった演出家の演劇観、あるいは演劇を通しての世界の見方、人間の見方が、その作業のなかに反映されていなければならないと、私たちは考えます。
つまり、従来の「演劇教室」と、ワークショップとの差異は、そこに演出家の明確な演劇観が反映するという点でしょう。単なる技術の切り売りではない、演劇とは何かを参加者が主体的に問いかける場が、市民向けのワークショップには要求されているのだと思います。

鑑賞者に対するワークショップの第一の目的は「俳優とは、舞台の上ではね回り、大きな声を出し、恥ずかしいことを恥ずかしげもなくやる人々」としか認識していない日本の観客に、俳優の条件を明確に提示し、その作業が「誰にでも参加できるが、実は複雑で高度なものであること」を示すことです。
青年団はワークショップを通じて、演劇が市民社会に対してより開かれたものになる道を模索しています。
1994.8〜11.
青山円形劇場主催「高校生のための演劇ワークショップ」を開催。
東京近郊の女子高生140名から、ワークショップで選抜されたメンバーによる
オリジナル作品『転校生』(作・演出 平田オリザ)を青山演劇フェスティバルにて上演。
1994.11.
岩手県湯田町銀河ホールにて、ワークショップを行う。
地元の演劇関係者や高校の演劇部員、顧問の先生ほか三十数名の受講者・見学者が集まる。
1995.6~1996.3
北海道帯広市にて、十勝毎日新聞社主催「平田オリザの演劇ワークショップ」開催。
一般受講者と高校生受講者の2クラスに分かれ、月2回のペースでワークショップが行われる。
この地域で、本格的な長期の演劇ワークショップが開催されるのは、初めてのことであった。
(平田はこの時期、ワークショップのために北海道から沖縄与那国までを駆けめぐることになる。)
1995.8〜9.
沖縄県与那国島にて、はいどなん伝説をモチーフにした作品『南へ』滞在稽古と、
地元青年会を中心とした市民グループ及び、小学校全生徒18名とワークショップを行う。
1ヶ月に及ぶ滞在稽古の締めくくりとして『南へ』公開リハーサルと、
「大人ワークショップ発表会」「小学生ワークショップ発表会」がそれぞれ行われた。
1995.11~1996.1 青森県浪岡町にて弘前劇場との合同公演『この生は受け入れがたし』稽古のため、 平田と俳優数名が長期滞在。滞在中に浪岡、八戸でワークショップ・講演等を行う。
1994.12~1997.7.
京都にて芸術祭典・京主催「月の岬プロジェクト」のためのワークショップが行われる。
平田が京都に長期滞在し、ワークショップにより『月の岬』(作:松田正隆/演出:平田オリザ)
の出演者を選抜。応募者は広く一般から100名が集まった。
『月の岬』は、ワークショップと稽古を経て、京都、吹田、世田谷にて公演。
この作品は、第5回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞する。
また、京都でのワークショップの模様を記録したビデオ『体感ワークショップ・平田オリザの文法』
が紀伊國屋書店から発売される。
1996.7〜12.
北海道帯広に続き、北九州でも連続ワークショップを北九州演劇祭の一環として行う。
福岡県飯塚市、春日市、大牟田市、中間市、行橋市、岡垣市、北九州市の7都市を巡回
ワークショップを行い、最後は創作の発表も行うという長期の企画となった。
1998.4
オーストラリアの劇作家大会の招きにより、メルボルンの大学構内にてワークショップを行う。
地元大学生を対象に、通訳を介しての外国人向けワークショップは初めての経験となる。
1998.8.
青年団『ソウル市民』、青年団プロデュース公演『新版・小町風伝』『夏の砂の上』公演の
ための3公演合同ワークショップを、利賀村にて行う。
3公演すべての出演者が利賀村にて合宿し、最後に創作劇の発表会を行った。
また、富山県内の高校演劇部員のための合同ワークショップ、例年利賀合宿の度に行われていた
地元中学生とのワークショップも利賀村で開催。この年は特別に利賀の
姉妹都市ギリシャのデルフィの中学生も加わり、国際的な演劇ワークショップとなった。
1999.6.
『東京ノート』フランス公演に向けて、フランス人俳優オーディションのため渡仏。
演出家フレデリック・フィスバックのサポートにより、オーディションのためのワークショップを
パリにて数回に渡って行う。
1999.10. 『東京ノート』韓国公演にともない、ソウル・芸術の殿堂「日本週間」の中で韓国の演劇科の学生や若手の俳優を対象にワークショップを行う。