東京公演舞台美術プラン・投票&審査結果発表!!!!  2007.12.27

三重編広島編青森編熊本編のそれぞれの舞台美術プランは、各都市でおこなった舞台美術ワークショップで生まれたアイデアをもとにして作られました。
2008年1月におこなわれる東京公演の舞台美術プランは、これら4都市の中から1つみなさまの投票および、作・演出の平田オリザ、各地のプランを手がけた舞台美術コーディネーターの杉山至の選定が加わり三重編に決定しました。


杉山至よりコメントと総評 三重編広島編青森編熊本編総評

『隣にいても一人』の舞台美術ワークショップ、および装置製作に参加してくれた皆様、および各地でワークショップの開催と進行を支えてくれた、スタッフの皆様、ご苦労さまでした。そして、ありがとうございました!
同じ戯曲に対し、各地の劇場や土地柄、風土性を取り入れながら、ワークショップを通じて、舞台美術プランを参加者と共に立ち上げてみるという非常に実験的な企画だったのですが、想定していたよりも、より豊かで場所に特化しつつ、とても個性的で創造的なグループワークによる空間作りができたのではないかと思います。
皆様、ありがとうございました。
アゴラ劇場での最終公演では、4つの地域で立ち上げたプランのうち、三重のプランをベースにするということを杉山と平田で決定いたしました。
当初、各地の作品を一同に並べてみてコンペ形式で最終公演となる東京こまばアゴラ劇場での、舞台美術を選出するという考えでしたが、予想よりも、より地域の劇場に特化した個性的なプランが立ち上がったこと(このことは非常に喜ばしいことであります)により、劇場に対するフレキシブリティから、三重のプランがアゴラ劇場という極小空間には妥当であろうと判断しました。
もとより優劣を競うということではなく、舞台美術の可能性をより深く考え体験してみようという趣旨で、ワークショップを開催してきたわけです。
今回、アゴラ劇場での公演ということで、三重のプランが選ばれたわけですが、これがアゴラ劇場でなかったら、別のプランでいくという可能性はもちろんあります。
以下、各地の個性的なプランをみていくと、どれも甲乙つけがたくその地域や空間性でなければ立ち上げられなかったすばらしい舞台美術であることがお分かりいただけると思います。


東京公演舞台美術プランに決定!!!!


●三重編のプランについて・・・杉山至

この企画の「しょっぱな」といこともあり、ワークショップは緊張した出だしとなったが、三重ののんびりした雰囲気の中、素敵に「間の抜けた」不可思議な空間ができたのではないだろうか?畳、建具等、一つ一つのものは、しっかりと作り込んであるが、作品の不条理さをうまく受け止めながら、かつ空かしたようなプランになった。また、なにもない空間をうまく美術セットに組み込んでいるので、劇場の規模が多少変化しても、美術が作り出す空間性が力を持ち得る作品となっている。
三重のプランの最大の特徴は畳が定型でなく歪んでいるということ。歪んでいても畳と認識してしまう日本人の共通イメージをうまく利用しつつ、遠近法を使いながら茫洋とした独自の四畳半宇宙を作り出すことに成功している。


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●広島編のプランについて・・・杉山至


山小屋シアターという、小さいながらも熱い(色々な意味で)空間を読み取りながら、ニ方向客席という劇場のコーナー(角)を生かしたプランとなった。
また他の地域は床に畳を使ったのに、広島編だけは若い出演者が多かったことや、地方にありながら、世界史に残る断然をその風土に刻み込んでいることが作用したのか、ビニールフローリングという悲しくも若い力と巧ましさを感じさせる床材の選択が他の作品と大きく違う『隣にいても一人 -広島編-』の世界を作り出すのに成功したといえる。また、たまごのような不思議な形をしたテーブルのデザインはワークショップ参加者の優れたデザイン。人が座る位置により、微妙に距離、角度、親密度、関係性が変化することをねらっている。


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●青森編のプランについて・・・杉山至

劇団渡辺源四郎商店とアートサポート集団、空間実験室の多大な協力と尽力により、青森国際芸術センターでワークショップを開催できたことが、この美術プランには大きな影響を与えた。強烈に個性的な建築と青森の自然が作りだす微細な空間環境を読み解き、ワークショップ参加者が生み出したプランは抽象的でありかつ非常に即物的、触覚的な多面性をもった芯の強いおもしろいプランになった。中央の演劇エリアはなにかアリーナ(格闘技場)を思わせる救心性の強い空間となっており、さらにこの『隣にいても一人』のような事態が他の家庭でも意外と普通に起こっているのではないかというコンセプトから、グリッド空間のように、角材によるスペースフレームが劇場を浸食している。このシリーズでこれだけの環境的広がりをもったプランは他にない。


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●熊本編のプランについて・・・杉山至

最後の地、熊本。三重以外はどこの地域でも他がどのようなプランで行ったかを種明かししながらワークショップを行ったわけだが、そういう面では、様々な手法が出尽くし、むずかしい局面にたたされた熊本であったはずだが、県立劇場演劇ホールという小劇場の空間に比べると非常に大きな空間をうまく読み解き、逆手にとりながらその力をうまく利用したプランになった。広いが故にぽつんとした感じが強調され、それがまた可動する!という青年団的にも珍しい動くセットを導入したことが、この『隣にいても一人』の世界にまた異なった次元を投入できたのではないか。あえて梁や柱という空間をフレーミングする要素を排除して、畳のエリアと入り口、引き戸が劇場の宇宙に漂っている、なにか『宇宙にいても一人』というところまで、空間が泳ぎだしていた。


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【総評】

今回の舞台美術作品群は甲乙つけがたく、どれも劇場や空間を読み解きながらグループワークという楽しくも過酷なコミュニケーションを通じた創作活動を経なければたどり着けない、深みのある、かつ独善的ではないよい意味での個性的な作品になったのではないか。自分たちの風土や文化、原風景をもう一度たどりながら、それを今新たに立ち上げる作品に豊さとして取り入れる。そして出来上がった作品は、やはりその地域、文化を生かした、かけがえのない作品に成長していく。
日本のパフォーミング・アートはこれからだ!そしてそれはやはり地域の潜在力を活用しなければあり得ないということを、今回の企画で実感しました。
そして、ワークショップ、公演を各地域で支えてくださったスタッフの方々、本当にありがとうございました!!


2007/12/28 杉山 至


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杉山 至 プロフィール

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966年生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部卒。同大学在学中より劇団青年団に参加。その後、早稲田大学芸術学校にて建築を学ぶ。現在劇団青年団にて舞台美術を担当。舞台美術研究工房六尺堂/ディレクター。舞台美術家協会員。日本舞台美術家ギルド所属。二級建築士、桜美林大学、女子美術大学非常勤講師。2001年度文化庁芸術家在外研修員として1年間イタリア・ナポリの舞台美術工房にて研修を受ける。2006年カイロ国際実験演劇祭参加作品、地点『るつぼ』にてベスト・セノグラフィー賞受賞。


 ●各地で行われた舞台美術ワークショップの概要(全プログラム終了済)●

 - 舞台と空間のワークショップ -  講師:杉山 至
 

ステージという空間をデザインし、俳優やダンサーがその中でパフォーマンスをすることで完成する「舞台美術」。普段みなさんが客席から見ている舞台セットは、いったいどのようにして考えられ、創られているのでしょうか。
今回は、青年団の舞台美術家、杉山至がナビゲーターとなって、みなさんのイマジネーションを引き出し、空間の中に世界を創り出す面白さをお伝えします。

絵が描けないとダメ?
工作ができないとムリ?
いえいえ、そんなことはありません。


まったくの未経験の方も大歓迎!ぜひご参加ください。!
またなんと今回は、このワークショップから生まれたアイデアをもとにして、『隣にいても一人 』の美術プランを決定します。


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